フラワーデザインは常に自分を成長させてくれるもの ~人を感動させる花の力に魅せられて~

インタビュー

NFD全国高校生フラワーデザインコンテストにて高校1年生でNFD銅賞、2年生ではNFD金賞・農林水産大臣賞・審査員特別賞と連続受賞を果たした八木野の花さん。2025年現在、高校3年生で受験勉強に励みつつ、第21回NFD全国高校生フラワーデザインコンテストへの出展を視野に入れているといいます。八木野の花さんがフラワーデザインを習い始めたのは小学校3年生。以来、NFD3級フラワーデザイナー資格検定試験、2級の資格を有するまでになり、現在大学の受験勉強とともに1級資格取得に向けて猛特訓中です。そんな野の花さんが幼き頃よりフラワーデザインの魅力に取りつかれたルーツはどこにあるのでしょう。フラワーデザイン界の未来を担う若きデザイナー、八木野の花さんにインタビューしました。

フラワーデザイナー・フローリストである父の姿

生まれた時から、花はいつも身近にありました。私の父は、フラワーデザイナーでありフローリストでもある、NFD本部講師の伊東慶直です。周りに花がある環境でずっと育ち、小さい頃から撮影やコンテストなどに連れて行ってもらうことも多く、父の仕事をしている姿を見てきて、憧れを抱き、ごく自然にフラワーデザイナーになりたいと思うようになりました。 

本格的に始めたのは、小学校3年生。基礎をしっかり身につけたほうが良いという父の勧めで、NFD公認校のFLOWER DESIGN希花亭の倉知希巳子NFD名誉本部講師の教室に、月に1回通うようになりました。最初の頃は、季節のアレンジメントなどを教えてもらいながら見本の通りにつくるのですが、思っていたよりずっと難しく、長い時間じっと座っているのも大変で……。それでも、その大変さを上回るくらい楽しい。花を触っていると癒されるし、だから続けられてきたのだと思います。 

小学生から3級へ挑戦 

教室では、子どもの頃から高校生になった今も、同年代は全然いませんね。主婦の人などが多く、声をかけてくれたり、可愛がってもらっています(笑)。 NFDフラワーデザイナー資格検定試験3級の試験勉強を始めたのは、小学校の高学年ぐらいになってからです。試験の前は、家に帰って何回も組み直したり、挿し直したり。自分でどういう作品をつくりたいのか、一から考えなくてはならないのが、本当に大変でした。 

辞めようとは全然思わなかったのですが、中学生の間は教室がコロナ禍で閉まっていて行けなくて。途中で再開したものの、部活が忙しくてなかなか通うことができなかった。なので、高校生からまたやり直した感じです。 

資格を取るメリット

高校の入学時には、フラワーデザイナーになると決めていたので、時間を取られる部活はパス。教室も月3回に増やし、本格的に取り組み始めました。資格も3級を取った時から、次は2級、そして1級と目標ができて、どんどん上を目指す気持ちが強くなったように思います。その過程で他のデザイン分野にも興味を持つようになり、そういう面でも早くからの資格挑戦は正解だったと思います。 

また、デザインの基礎的な知識を身につけたことで、理論的に挿すことができるようになり、より深くフラワーデザインを理解できたように感じています。作品をつくる際も、資格を取った時に学んだ技術を意識して使っています。国家資格であるフラワー装飾技能士はフローリスト向きだと思い、私はデザイン力をつけたいと考えたので、まずはNFDのフラワーデザイナー資格を取ることにしました。 

『新NFDフラワーデザイナー 資格検定試験テキスト』及び『新フラワーデザイナー 資格検定試験・ 学科問題集』
1級新古典的(参考作品)

難しくなるのが楽しい

私は今フラワーデザイナー資格検定試験1級を目指しているので、生活の中で占めるフラワーデザインのウエイトは90%くらい。受験生なんですが(笑)。大学も、空間デザインをはじめ、他のデザイン分野も学びたいと思っているので、造形やデザインを学べる大学を目指しています。

花はもちろん好きですが、やっぱりフラワーデザインそのものが好き。つくっていると季節を感じられますし、見ていてもワクワク。自分を表現できるというのも、大きな魅力だと思います。造形的には、シンプルで自然っぽい感じが好きですね。 

級が上がっていくごとに、つくれる幅が広がることがすごく楽しい。3級の時にはできなかったデザインも、応用させた形で、自分のイメージ通りの作品に仕上げることができるようになっていくんです。どんどん難しくなりますが、それが本当に楽しい! NFD全国高校生フラワーデザインコンテストでも、試験のために学んだ内容や今まで習ってきた技術に助けられました。 

NFD全国高校生フラワーデザインコンテスト

小さな頃から父に連れられて日本フラワーデザイン大賞は見に行っていたので、高校生のためのコンテストがあるのは知っていました。それが最初に自分が出場できるコンテストだと思いましたし、評価してもらえる場所だったので、高校生になったら出場するんだ! って決めていました。おかげさまで、1年生ではNFD銅賞、2年生でNFD金賞・農林水産大臣賞・審査員特別賞(山成美穂賞)をいただくことができました。自信につながりましたし、とても励みにもなりましたね。小さな頃から習っているだけに、時々本当に力になっているのか、実際はどうなんだろうと思うこともありました。それだけに、これまでの努力はきちんと糧になっているのだと実感でき、とても嬉しかったです。 

金賞の作品は、パームボートというヤシの葉柄の自然素材を選択。途中で割れたりして「これ完成するのかな」と悩みましたが、とにかく妥協したくないので力技でガチッと固めて。見えないところもしっかりやろうと思い、鉄板が見えないように裏張りをしたりと工夫しました。結果的に、会場では360度展開で審査されたので、こだわって良かったです。NFD全国高校生フラワーデザインコンテストは高校生だけしか出せませんので、3年生の今年は最後の挑戦。頑張りたいと思います。 

第20回NFD全国高校生フラワーデザインコンテスト
NFD金賞・農林水産大臣賞
審査員特別賞・山成美穂賞 「個性の交差」
第19回NFD全国高校生フラワーデザインコンテスト
NFD銅賞「環」

見守られて


コンテスト作品については、デザインは自分で考えますが、父からは当日の流れであるとか、どういう気持ちで臨むべきとか、心構えの部分を教えてくれるのは、やはり心強いです。たとえば、市場でコンテスト用に良い花を選ぶコツや、本番は80%くらいで気合い入れ過ぎない、など。経験してきた重みが違うので、すごく参考になります。ただフラワーデザインというものに対しての考えとか、これからこうなるとか熱く語ってくれますが、いつも同じことを言っているからちゃんと聞いてないかも……(笑)。 

妥協しないことを大切に

アイデアを出す時は、現代アートなどの作品を見て、そこからインスピレーションを受けて、ということが多いです。近くに豊田市美術館があり、昔からよくそこに連れて行ってもらい、アートに触れる体験をしていたのも大きいかもしれません。他のフラワーデザイン作品を見てしまうと影響されてしまいそうなので、違う分野から発想の種を得るようにしています。 

作品づくりで大切にしているのは、妥協しないこと。しっかり時間をかけて、きちんと客観的に見て、少しでもダメだと思ったら直して。自分が一番納得できる形にすることを重視しています。だからこそ、頭の中で考えたり描いたものが実際に形になった時は達成感がありますし、逆に思うものと違ったり上手にできなかった時は悲しいですね。でもその分、挑戦しがいがあります。 

人の心を動かす花の力


もう一つ、本格的にフラワーデザイナーになりたいと思うようになったきっかけは、東日本大震災でした。あれは私が10歳の時で、父がボランティアで岩手県にフラワーデザインのデモンストレーションに行く時に、一緒に連れて行ってもらったのです。そこで、つくった花束やアレンジメントを被災者の方々に渡すお手伝いをしたのですが、すごく感動してもらえて……。被災した場所や仮設住宅に訪問した時も、最初は私たちは関係ない人だし、受け入れてもらえるのかと不安だったのですが、実際に行ったら本当に泣いて喜んでくれた方もいたし、元気になったと感謝の言葉を皆さんがかけてくれたんです。花はこんなにも人の心を動かせるんだ、笑顔にできる力があるのだと実感して、しっかり習い始めようと思いました。今でも忘れられない思い出です。 

職業としてフラワーデザイナーへ

自分の好きなことを仕事にできるのが 一番良いと思うので、職業としてフラワーデザイナーになるつもりです。というか、なります! まだスタート地点にも立っていませんが夢は大きく、いずれは国外でも活躍できるようになりたいですし、常に新しいデザインで多くの人をワクワクさせるようなそんなデザイナーになりたいです。 

私にとってフラワーデザインは、常に自分を成長させてくれるもの。そこには正解もないし、どんどん目標ができて、前へ前へと進めてくれます。それがすごく楽しい。フラワーデザイナーは、私自身の心も技術も高めてくれるだけでなく、人を感動させられる素晴らしい仕事だと思います。 

【伸びゆく若木を見守る、ご両親の声】

父から
特に勧めたわけではありませんが、小学校に入る前からコンテストの会場に連れて行ったり、私が試作をしたりするのを目の当たりにして育っているので、本人がやりたいというのなら良いと思っています。他のことに興味が出れば、それでも全然構いません。大学に入ったら、いろいろな職種のアルバイトをいっぱい体験して、いろいろなものを感じて、最後にやはりお花が良かったらやればいいというスタンスです。それでも、自分のやっている仕事に魅力を感じてくれているのは嬉しいですね。

母から
小さい頃から日常的にフラワーデザインに接しているので、アドバンテージは大きいと思いますし、それを活かすことができているのは幸せなことです。一から作品をつくるという大変さはあるでしょうが、花に限らず美術館で見たアートなどを吸収しながら、技術もしっかり身につけてほしいです。応援しています。

一番きれいで力強いのは、自然の野原に咲く花々。野の花のように強く生きてほしい──。野の花さんの名前には、そんな想いが込められているといいます。お父上がフラワーデザイナーであることの影響が大きいとはいえ、その名の通り、花とともに生きていくことを決めたのは彼女自身。東日本大震災のボランティアで人の心を動かす花の持つ力を実感し、難しいことが楽しいと1級に挑戦する姿は、すでに確固とした信念を持つ一人前のフラワーデザイナーです。NFD全国高校生フラワーデザインコンテストにおける2年連続の受賞で示した才は、今後ますます成長し、満開に咲き誇ることでしょう。
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