花き消費動向の今と求められる花

マーケティング

世界の花き消費の今

日本の花きは、残念ながら生産、消費とも減少を続けています。世界花き三大消費地と言われているヨーロッパ、アメリカ、日本の中で、日本だけがダウントレンドとなってしまっています。ヨーロッパでもアメリカでも花きの消費は過去10~15年で1.5~2倍に増えているのが現状です。そんな状況である世界の花き栽培市場全体でみると、2023年の9兆6千億円から2029年には13兆5千億円になると予想されています。そんな中で今、花き消費が伸びているのは中国、インド、ブラジル、東アジア(マレーシア、ベトナム)です。とくにベトナムは、以前は日本に輸出するしかなかったのが、近年では国内消費が増え日本への輸出が減少する事態となっています。世界の花き消費は新たな時代に入っているのではないでしょうか。

国内の花き生産量は減少傾向だが

日本の花き生産量(切り花)は、1996年の57.6億本をピークに2023年には30.3億本とピーク時の53%と半減しています。その一方、輸入は全体として11~12億本でほぼ一定となっています。20年後には日本の生産が無くなるのではなどと言われることもありますが、消費マーケットがある限り日本の生産が無くなることはないと言えるでしょう。確かに日本では生産人口の高齢化に加え、エネルギー費、肥料・農薬の価格高騰、気候変動などもあいまって、生産者が減っていて厳しい産地も多いのが現状ですが、そんな中でも30~40代の世代が頑張っている産地のほか、新規就農者が入っている産地もあります。気候変動に対しては、種苗会社も温暖化に対応した品種研究をしており、近年の草花・枝物ブームもあることから生産が皆無になることはないと考えています。

〇切り花国内生産量の推移

JFMAフラワービジネス講座(内藤育子氏資料より)

〇切り花 国産+輸入(国内流通本数)の推移

JFMAフラワービジネス講座(内藤育子氏資料より)

切り花 花き生産量の内訳

切り花の生産では、以前は「三大花き」とされたキク、バラ、カーネーションの順の生産量でしたが、近年変化しキク、切り枝、カーネーション、バラという順になっているといいます。後に続くのが、フラワーデザイナーのみならずフラワーショップでもよく見かけるガーベラ、スターチスなどの出荷量も増加傾向にあるといえます。最近は切り枝、草花の人気が高い傾向にあります。草花は先ほども挙げたガーベラに加え、マーガレット、コスモスなど、季節の移り変わりを感じさせる花、自然そのものの野の花が好まれていることがうかがえます。日本的な四季の変化を花を通して楽しむという日本人の感性にも合致しているのかもしれません。

花き購入率 最近1年で花を購入しましたか?

農林水産省による「花き消費動向調査(インターネット調査)」で毎年聞いている設問に「最近1年間に花を購入しましたか?」というものがあります。2009年には75%の人が花の購入経験があったのに対して、2024年になると36%まで減少してしまっていました。15年前では10人いれば、7~8人が購入するのに対して、2024年では購入していない人が6人という結果に。男女別の購入率は男性31%、女性40%。年代別では20代が24%、30代は34%、40代が37%、50代は48%となっています。50代女性のみを挙げてみると購入率は57%となっています。全体で36%でありますので、購入率が低いことはわかりますが、男女比は大きく開いてはおらず、歳を追うごとに購入率はわずかだが高まっていると言えます。
では、どんな場面で花を購入するかを見ると、自宅装飾用が39%、墓参り44%、お供え用35%、誕生日のお祝い24%(複数回答)となっています。花を購入する日では、母の日45%、お彼岸37%、お盆37%、お正月19%で、花き業界が仕掛けているバレンタインデー、いい夫婦の日などは6~7%と増えてきてはいますが、全体から見ると比率は小さいといえるでしょう。ただ、調査の結果には表れてきませんが、最近では成人式、卒業式での花贈りは伸びてきているといいます。また、年代別では29歳以下の世代の花の購入がコロナ禍以降伸びていることも注目したい現象です。もちろん絶対値は小さいですが、他の年代が全てダウントレンドの中で、注目されています。現在行われる歳時に加え、Z世代やα世代への花のアプローチ方法を考えることが重要になってくるのではないでしょうか。

出典:国産花き生産流通推進協議会 消費動向調査

花の購入価格帯について

プレゼント用では、3000円以上が49%、主流の3,000~5,000円は41%。1,500円以下のカジュアルギフトが2022年11%、2023年17%、2024年19%と少しずつ膨らんできてはいます。
自宅用では安い価格帯が狭まってきていましたが、2024年には反転して1500円以下が80%と生活防衛色が色濃く、価格帯はより低価格志向となっていることがわかります。なお、自宅用の受容価格帯は1,000~3,900円となっていて、実購入額は1,966円となっています。生産者や流通業者視点では現状の低価格を維持していくのはとても大変なことであると考えます。価格帯に変化をもたらすには、新たな付加価値が生まれることが望まれます。

出典:国産花き生産流通推進協議会 消費動向調査

花は誰が買っているか?

花の売上は、ギフト用では3割の顧客で、8割の売上となっています。自宅用でも2割の顧客で8割の売上を占めています。花の売上はリピーターに支えられているとも言えるでしょう。花きの消費拡大を図るには、現在の顧客を大事にすることはもちろんのことですが、新規の顧客開拓が重要となってきます。
では、そのリピーターの方は花をどこで買っているのか。以前は71%(1994年)が一般小売店でありましたが、現在では35%(2019年)と25年間で半減、スーパーマーケットが13%から32%と小売店に代わって伸びています。

出典:国産花き生産流通推進協議会 消費動向調査

花を飾っているサイズ(自宅切り花)

自宅で飾っている花は、短めが人気。92%が40cm未満を希望、20cm未満でも37%が望まれているといいます。自宅で使っている花瓶のサイズは、ミニサイズ(12cm以下)が49%、中サイズ(13~25cm以下)が71%となっています。今後花の消費拡大を図っていくには、ホームユース需要を伸ばしていくことがKEYになると考えます。現在市場に出回っている切り花は2L規格80~90cmがベースとなっています。短いと値が安くなってしまうので生産者は作りたがらないという理由もありますが、ヨーロッパではバラの80%が50cm以下の短茎が出回っているといいます。短茎であれば生産段階でも農薬・肥料・エネルギーが削減できます。そうした短茎の切り花ニーズを踏まえることで、日本でも適正な価格の短茎の花が出回っていくと思われますし、需要が伸びる可能性も考えられるのではないでしょうか。

出典:国産花き生産流通推進協議会 消費動向調査

求められる花

ホームユース、カジュアルユースの花が伸び代の大きな領域で、そこで求められる花は、短茎、小輪で、最近では草花、枝物が人気となっています。草原から摘んできたような自然を感じるシャンペトル(田舎風)の花束も人気です。これらのニーズに見合ったスペック(規格)の花が安定価格で供給していかなくてはならないのではないでしょうか。
世界中で時代のキーワードとされるウェル・ビーイング(well-being、心身が健康で社会的に満たされた幸福な状態)に花のある暮らしがフィットする。これをウェルブルーミングwell-bloomingと名付けて、花の効果啓発活動が花の消費拡大活動として始まっています。(一般社団法人 花の国日本協議会)
花き業界もSDGs(持続可能な開発目標)の活動として、スリーブ、フローラルフォーム、トレーなどのプラスチック使用削減、リサイクルの環境対応に取組んでいます。本丸である花についても、サステナブルな花(危険な農薬を使わない、農薬・肥料、エネルギーの削減)への転換に取組んでいこうとしており、新たな花の時代がくることを期待しています。

〇求められる花

Guest Columnist

松島義幸 MATSUSHIMA Yoshiyuki
1947年東京都生まれ。早稲田大学理工学部卒。1970年、キリンビールにエンジニアとして入社し、工場設備の増改設、メインテナンスに従事後、仙台工場、千歳工場の建設に参加。設備開発では「コーティング装置」(特許、社長表彰)、「ビール濾過機」(実用新案、社長表彰)等の実績をあげた。その後キリンの多角化の一環としてエンジニア部門の分社化に携わり企画、営業に転じた。台湾キリンでは飛躍的に売上を伸ばし黒字体質の経営基盤を作ったとして、1995年度のキリン経営大賞(社長表彰)を受賞。1996年キリンビバレッジ社に移り上海錦江麒麟飲料食品有限公司の総経理(社長)として新合弁会社を立上げた。2001年1月キリンアグリバイオカンパニー社長に就任。2006年3月キリンビール退職。同年5月JFMA(日本フローラルマーケティング協会)専務理事就任。8月MPSジャパン株式会社を設立、代表取締役社長に就任。

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