この植物の切り花を見せて、「これは、リンドウ科の『ユーストマ』という、アメリカのテキサス州辺りが原産地の植物です」と紹介すると、「何か勘違いしているのではないか」と、多くの人が怪訝な顔をされます。

「ユーストマ」という名前がトルコギキョウの別名であると理解する人でも、キキョウ科の間違いだろうと思われます。しかし、トルコギキョウは、リンドウ科の植物なのです。キキョウ科と思われるのは、原種の紫色の花と形が、キキョウの花に似ているからです。また、トルコギキョウといわれるので、原産国がトルコと誤解されますが、花の色がトルコ石の色に似ているからといわれたり、花の形がトルコのターバンに似ているからといわれたりします。しかし、トルコギキョウは、トルコとも、キキョウとも関係がありません。

トルコギキョウの学名は、「ユーストマ グランディフロラム(Eustoma grandiflorum)です。ユーストマは、「良い(Eu)と口(stoma)」に由来して、花の形を示し、グランディフロラムは大きい花を意味します。英語名は、「プレイリー(prairie)ゲンティアン(gentian)」で、「大草原(プレイリー)のリンドウ(ゲンティアン)」の意味をもちます。

日本には、昭和の初期に伝えられ、昭和50年代に品種改良が進められました。その結果、花の色では、白色やピンク、黄色や薄い紫色などがあり、花の形は、大輪や小輪、花の咲き方も一重咲きから八重咲き、フリル状のものまで生まれています。これらの多種多様な品種や、その栽培の技術は、日本で開発されました。そのため、この植物は、「アメリカ生まれの日本育ち」といわれることがあります。

トルコギキョウの花は、品種により敏感か鈍感かは別にして、エチレンという物質に反応して、萎れることが知られています。そのため、切り花を長持ちさせるために、エチレンの作用を阻害する物質(チオ硫酸銀錯塩)が使われることがあります。 (text:TANAKA Osamu)

フラワーデザイナー資格検定試験では

3級テーマ トライアンギュラー

その花の形体や形態、キャラクターなどにより、作品のイメージに合った使い方をします。
トルコギキョウは、自らの力で伸びていくような外向き的なイメージをもち、数本をまとめて使うことによって、その魅力を最も強く発揮する華麗な美しさを持つ“中程度の主張”の花です。作品の輪郭を表現(構成)したり、すっと伸びた茎のラインを強調したりする作品にぴったりなため、3級「並行-装飾的」や「トライアンギュラー」、2級「非対称形のブーケ」、1級「新古典的」や「相互に入りまじって」などに使われています。なかでも、一重咲きの淡いピンクが特徴の品種セシルピンクは、茎が細く淡い色合いが他の花材にも合わせやすいため、他のテーマでも利用されています。(text:NFD)

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