大正から昭和にかけて活躍した日本画家・福田平八郎。写生を基本に、斬新な形と色による新たな日本画の表現を追求し続けたそうです。本書は、没後50年の節目に開催された回顧展の図録です。初期から晩年までの作品が掲載され、創作の原点となる写生帖や素描も多く紹介。初期は写実的な作品が多く、晩年に近づくにつれて鮮やかな色彩かつ単純化した形態へと変化していきます。その中でも特に注目する作品は、表紙にもなっている昭和7年第13回帝展で発表した《漣》です。群青の線のみで波を描いた作品は、シンプルでありながらも、揺れる波が美しく描かれています。平八郎の描いた色彩や風景の切り取り方は、デザインのヒントになる部分もあるのでは。ぜひ一度、読んでみてはいかがでしょうか。
(蔵書番号:0003196)