平成26年度 NFD one leaf fund

活動報告書

北海道厚岸郡浜中町/ハーバリウム霧多布-地域でつくる霧多布湿原の植物標本集

「調査研究や環境教育に活用することを目的として、霧多布湿原とその周辺域に生育する植物の標本を作製しました。地域住民を中心としたボランティアメンバーが月に一度集まり、植物採取やラベル作成の作業を行いました。また、6月には地域の子どもたちを対象に海藻おしば教室を開催し、楽しみながらおしばを作る体験活動を行いました。2014年に完成させた植物標本は51種149個体となりました。標本作製作業には延べ39名、海藻おしば教室には19名の参加がありました。今後は、得られた標本と標本情報を整理し、情報公開に向けた整備を行う予定です。また今後、ボランティアツアーや生涯学習の一環として標本作製を行うことを計画しています。
● NPO法人霧多布湿原ナショナルトラスト 理事長/三膳時子

 


島根県津和野町・出雲市及び広島県庄原市/
住民組織の協働による里山保全システムの構築に向けた調査研究

里山は、「人の手」が入ることで多様な生態系と独自の景観が維持されています。里山保全は、ボランティア等による一時的な整備だけではなく、毎年継続した里山整備ができる仕組みを構築することが重要です。私たちのグループでは、地域住民らが周辺の組織・団体等と協働して里山整備を継続的に実施している4つの事例を調査しました。その結果、自伐型林業やレクリエーションなど里山整備を通じて収入を得る経済循環を作っていること、里山保全そのものが目的化するのではなく、鳥獣害対策や環境教育、里山文化の普及のための手段として実践されていること、の2つの条件を明らかにしました。持続的な里山保全を実施するためには、経済性を担保しつつ、里山の価値を創造し、参画する主体を増やしていくことが重要だと考えます。
● 中四国里山保全グループ代表/吉田 翔

 


鹿児島県奄美市 他/南西諸島向けのイネ科植物図鑑の作成

南西諸島では、ツキイゲやクロイワザサなどの興味深い生態の在来種や、オガサワラスズメノヒエやツノアイアシなどの本土では珍しい帰化植物が見られる。イネ科を学ぶには魅力的な地域であるが、南西諸島での普通種のイネ科は、本土では珍しい種類であったり、逆に、本土の普通種が分布していなかったりするため、本土で作られたイネ科の入門者向けの普通種図鑑は、南西諸島でイネ科を調べるときには役に立たない。この問題を解決するために、南西諸島で野外調査・標本庫調査などを行い、生態写真や同定に必要な植物体の部位のクローズアップ写真を撮影し、南西諸島版のイネ科植物入門図鑑を作成するデータ収集を行う。2014年度は、奄美大島、沖縄本島、石垣島、西表島で現地調査を行い、多数の種の写真撮影を行った。
● 桜美林大学 自然科学系教授/木場 英久

 


茨城県つくば市/
野生絶滅種コシガヤホシクサの野生復帰地における好適生育環境条件の解明

コシガヤホシクサは、1994年に唯一の自生地(茨城県下妻市砂沼)で水管理方法が変わったために消滅し、その後は植物園などでのみ保存されている野生絶滅種です。2008年から、コシガヤホシクサを野生復帰させるための保全研究プロジェクトを開始しました。この中で、絶滅以前の水位管理・水環境に戻す社会的取り組み、様々な研究を行った結果、2009年に、16年ぶりに自生地で花が咲き、種子が実りました。しかし、今もなお野生の集団が自立して生育している状況にはなっていません。私たちはNFD助成金によって、どのような環境がコシガヤホシクサによってよりよい環境であるかを調査しました。その結果、土壌や水深について適した環境がわかってきました。コシガヤホシクサが野生に戻ることができるように、さらに研究を続けていく予定です。
● 国立科学博物館 植物研究部/田中 法生

 


埼玉県秩父市/市民の手によるヤマユリの保護増殖活動

秩父地域に広く分布し、人々に馴染み深いヤマユリが開発やサル、イノシシによる食害等で年々減少の一途をたどっている。本会ではヤマユリの復活を目指し、種子の発芽促進処理技術を用いて苗作りに取り組んでいる。特に秩父地域内の自生地から種子を採取し、苗を作り、自生地に返すことを大きな目標としている。活動2年目となり採取した種子から苗ができ、自生地に戻す準備も始まった。苗作りと並行して獣害対策、自生地の管理にも取り組みを広げている。今年度はサルやイノシシの被害を受け、花が見られなかった自生地も多く、1日も早くこれらの地域に苗を移植してその経緯を見守りたいと考えている。
● NPO法人秩父の環境を考える会 理事長/町田 和彦

 


神奈川県三浦郡葉山町/
三浦半島に自生するヤマタバコの保全に関わる分類学及び生態学的研究

私たちの会は、秩父の自然や文化、歴史などを守り、次世代に伝える活動を行っています。この度、本協会から助成をいただき「市民の手によるヤマユリ保護増殖活動」を始めました。自然豊かな秩父でも、ヤマユリがサルやイノシシの食害や雑木林の手入れ不足などにより急速にその数を減らしています。稀少種ではありませんが、ヤマユリの復活を目指し保護増殖に取り組みます。地域個体群にこだわり、原生地から種子を採取し戻す予定です。花弁の形や色の多様さを目の当たりにし、あらためて原生地へ戻す必要を感じています。秋に種を採取、低温処理をし、春にプランターへ植え付けました。新たな春を迎え、2年目の活動に期待を膨らませています。

● NPO法人 秩父の環境を考える会 理事長/萩原 良朗