『日本の植物園』
岩槻邦男/著
東京大学出版会/刊 2004年/発行 250ページ

 植物園とは何か。これは本書の第一章に提起された事柄であり、筆者は本書のテーマそのものであるとしています。日本でいわゆる近代的な植物園がつくられるのは明治に入ってから。古くから庭園を造り、四季の移り変わりを楽しんできたことを思えば少し意外に感じるのではないでしょうか。
 本書ではまずヨーロッパ、アメリカ、アジア諸国、日本の順番で植物園の歴史、あるいは国としての植物園の存在意義などが細かく説明されています。そして、著者は日本の植物園施設の問題点を世界各国の植物園と比較して、世界をリードする植物園をつくる必要性を提起しています。歴史や背景の他、著者の考察も織り交ぜて書かれた文章は興味深く、つい読みふけってしまいます。日本だけにとどまらず、世界の植物園も多数紹介されていて、その説明の豊富さ、多様さに驚かされます。
 著者によれば、日本語では植物園と動物園は対になった言葉だそうです。ただ、娯楽的要素の強い動物園に比べ、植物園はなじみにくく、広く認知されているとは言い難い状況とのこと。本書をきっかけに、ぜひ近くの植物園まで足を運んでみてはいかがでしょうか。

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