『世紀末建築』 ※閲覧のみ
三宅理一/文 田原桂一/写真  講談社/刊

 本書は全6巻からなる、ヨーロッパを中心とした世紀末建築の集大成です。
 各巻によって触れている国やテーマが異なり、1巻は「ジャポニスムとアール・ヌーボー」、2巻は「モデルニスモと幻想の建築」、3巻は「リバティ様式と東方への夢」、4巻は「分離派運動の転回」、5巻は「アーツ・アンド・クラフツと田園都市」、6巻は「民族文化と世紀末」となっています。5巻では今年の5月号で紹介したウィリアム・モリスが主導したアーツ・アンド・クラフツ運動についても扱っています。1巻ではいわゆるヨーロッパでの日本趣味という意味での「ジャポニスム」についても取り上げられており、当時の日本美術がどんな影響を与えたのかなどが書かれています。
 建築物は絵画や美術品と違って、その場所に行かなければ見ることはできませんが、本書は縦43cm、横31cmの大型の図書。掲載されている写真の迫力は満点です。また、写真に写り込んだ光の加減が、ステンドグラスや階段などに施された装飾をより美しく見せています。装飾の様式や色合いも国や時代によってカラフルだったり、シンプルなデザインだったりと見ていて飽きない写真ばかり。アール・ヌーヴォー様式やガウディなど、有名な建築物も数多くあります。もちろん写真だけではなく、随所にちりばめられているそれぞれの時代の出来事などをまとめた総論や都市論も読み応え十分です。
 閲覧のみではありますが、第10回港区みどりの街づくり賞を受賞した花ファッションハウスで、世紀末のヨーロッパの景観に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

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