Flower Buzz Vol.15


 

Vol.15 見たい・知りたい・使いたい!【オンシジウム】

名前はギリシャ語のonkidion(オンキディオン=小さなこぶ)に由来する。唇弁(リップ)の付け根にこぶのように隆起があることからそう名付けられた。実は「群雀蘭(むれすずめらん)」という和名もあり、言われてみればそのようにも見える。植物の進化の最後に現れたラン科は、植物の頂点にいると言えども、交配により次々と新しい種が登場している。未来のオンシジウムはマーケットに合わせてさらに進化するだろう。

フラワーデザイナーの視点

しなやかでゆれるような動きを持つシャリーベービーは、チョコレートのような甘い香りが漂いフラワーデザイナーにとって魅力的な素材です。組み合わせる花材によって、洋風にも和風にもデザインできます。

また、多くの本数を使って蝶の乱舞を表現することも、数本で空間を生かした広がりのあるデザインをすることもできます。

茎を生かして作る「流れるようなエレガントなブライダルブーケ」、松や水引を使って「和装ブーケ」、個々の花達を長く連ねていって腕に巻きつけるような「フローラル・アクセサリー」など、楽しみ方はいろいろ。

2013年秋冬花ファッショントレンドカラーは紫。紫系の花と合わせると、トレンド感あふれる大人色のデザインが出来上がります。

あなたのデザインは・・・・

  

花市場の視点

オンシジウムは1980年代に切り花として市場流通するようになった。当時は黄色一辺倒だったが、現在では斑点のない品種や白や赤など色とりどりの品種が流通している。シャリーベイビーはチョコ色の花弁にチョコの香りを併せ持つ大人テイスト。ミントの葉と合わせれば、チョコミント風フレグランスブーケのできあがり。目立たない品種だったが、ダリアの黒蝶に象徴されるような赤黒ブームの到来で、知名度も一気に広がった。

 

 

 

 

植物学の視点

ランの仲間をいうラン科は、世界におよそ22,600種がある。大雑把にいって世界の植物の1割はラン科の植物だといってよい。科としては23,600種を含むキク科に次ぐ2番目の大きさである。また、ラン科の総種数は日本産植物の4倍以上であり、この点からもランの多様性の大きさが推察できるであろう。

 

分類と分布

 オンシジウム(「オンキディウム」とも綴る)は、オンキディウム属(Oncidium)、時にはかたちの似た別の数属のランのことをいう。属の名、つまり属名のOncidiumは瘤(こぶ)を指すギリシア語のonkosの縮小形onkidionに由来し、‘小さな瘤のある’の意味である。1800年にオロフ・シュワルツ(Olof Swarts)がこの属を設立したときに、基準としたオンキディウム・アルティッシムム(Oncidium altissimum)が唇弁の基部に瘤状の突起があることを知り、それがこの属名を生むきっかけになった。
 オンキディウム属には330の野生種があり、それらはアメリカ大陸の熱帯から亜熱帯圏に属する合衆国フロリダ半島、メキシコ、カリブ海諸島から南アメリカにいたる地域に分布している。大半の種は地表ではなく樹上に着生して暮している。
 これまでオンキディウム属に分類されてきた側萼片が合着するブラジル産の種は、他のオンキディウム属の種とは系統が異なることが判明したため、ゴメシア(Gomesia)等の別の属への移行が検討されている。

 

オンシジウムの葉

オンシジウムは先端に1~3つの葉を生じる偽鱗茎をもつ。葉のかたちと大きさは種によって異なるが、日本では通常その形状のちがいにより、オンキディウム属を、薄葉系、剣葉系、棒状葉系、厚葉系の4系に区別してきた。なお、剣葉系の大半をトリムニア属(Tolumunia)、棒状葉系をトリケントルム属(Tricentrum)、厚葉系をプシコプシス属(Psychopsis)のように別属とする見解もある。

 

オンシジウムの花

 花をつける茎である花茎はこの偽鱗茎にある葉の腋が出る。花茎は長さわずか数センチの種から1メートルを超える種まである。花は小形から中形で、総状花序に多数つき、同時に多数の花が咲くため、とても目立つ。
 ランの花は3数性といい、3つの萼片と3つの花弁をもつが、大半の種でそれぞれの1弁が他の2弁とは大きさやかたちが異なっている。萼片では背萼片、花弁では唇弁がそれである。とくに唇弁は他の2つの花弁(側花弁)とは通常大きくことなったかたちや大きさをしている。オンシジウムも例外ではないどころか、オンシジウムでは唇弁が他の弁片を圧して大きく、しかも色彩の鮮やかで目立つことも特色のひとつとなっている。唇弁はまったく切れ込みや裂片に分かれることがない種も一部あるが、多くは3つの裂片に分かれ、そのうちの中央の裂片がとくに大きくなり、耳状の小さな側裂片をもつ種、あるいは側裂片が大きく発達する種などがある。
 花の中心は雄しべと雌しべが合着してできた蕊柱があるが、オンキディウム属ではそれに翼があることが特徴のひとつになっている。

 

園芸への利用

 オンシジウムといえば多くの人が思い浮かべるのは、濃黄色の唇弁の基部や小形化した他の弁片が海老茶に染まった配色の花だろう。オンシジウムは英語でバタフライオーキッドと呼ばれることがあるが、まさにそのさまは群舞する黄蝶のようだ。その他、濃いめの黄色一色のもの、下半分が白で上半分が朱色などの配色をしたものなどもあり、花の色調や配色などは変化に富んでいる。
 オンキディウム属では多数の野生種を交配親に利用して、様々の栽培種が作出されている。園芸上とても重要な属のひとつとなっている。園芸では属名を省略した略称を用いることがあるが、オンキディウム属の略称はOncである。
 栽培種のいくつかを紹介する。‘ジャミー・サットン’と‘ホノルル’の交配で1983年に生まれた‘シャリーベイビー’(Oncidium Sharry Baby)はそのひとつで、花弁の色のコントラストが鮮やかなうえ、チョコレートに似た香りもあり人気だ。黄色地の唇弁をもつ大輪の‘スターウォーズ’(Oncidium Star Wars)は切り花に利用される。小型の矮性種で、俗に‘ミニ・オンシ’と呼ばれるポプリ群の‘ビューティー’(Oncidium Potpourri ‘Beauty’)は白花で中心部分が朱を差したように赤く染まり鮮やかである。
 従来からの鉢植えの観賞用、切り花などの需要に加え、高さ1メートル以上にもなる高茎種もあるオンシジウムは、ホテルのロビーや展覧会会場などでのフラワーデザインにも欠かせない存在である。多様な用途に向くオンシジウムはカトレアやデンドロビウムとともに、今や代表的なランのひとつとなっている。

記/大場秀章(植物学者)

 


 

制作協力/大田花き花の生活研究所