Flower Buzz Vol.14


Vol.14 見たい・知りたい・使いたい!【クルクマ】


 

根は春ウコンとして漢方に使われ、花はクルクマと呼ばれてその美しさを愛でられ、スパイスになればターメリックとして知られる。また、含まれるポリフェノールがクルクミンで、肝臓などへの効能が話題になっている。名前を変えて変幻自在に用いられるこの植物は、非常にポテンシャルが高いといえる。

フラワーデザイナーの視点

蓮にも似た花は、とてもみずみずしい美しさがあります。

花も美しいですが、デザイナーにとっては、茎や葉も魅力的です。

すらりと伸びた茎や葉を使って、図形的なデザインをしてみては。

図形的なデザインにあう植物は、地面から葉と花の茎が出ている植物など(カラーなど)が良いと言われています。そのような植物は、茎から葉が出ないため、花はもちろんのこと、茎を使ったデザインに最適です。(茎から葉が出ている植物を使って、茎を生かしたデザインをする場合、ある程度、葉を取り除く必要があります。その結果、茎にはわずかですが葉がついていた名残が残ってしまうからです。)

キャンパスに図形を描くように、花と茎と葉で、クルクマの図形を描いたり、花を短く扱い、それに葉を添え、塊と線の対比を見せるようにするなど、自然界の姿とは違う姿に再構築して新たな魅力を発見する作業もデザインの醍醐味です。

 

花市場の視点

花に見える部分は苞(ほう)であるため長持ちする。高温に悩まされるこの時期に安心して使える信頼のアイテム。盆花のハスの代品としてシャロームという品種がメインに流通していたが、最近はタイ王国からの輸入も増え、国産品種も多彩。白、グリーン、ピンク、複色、花かじょ序 の形もサイズも多岐にわたり、洋花としての注目度が高い。写真はタイ王国から入荷する「紫苑(しえん)」。

植物学の視点

妙なかたちをした花材、クルクマは実は花ではなく花を包み保護する役割をすると呼ぶ葉の1種が密に集まったものなのである。クルクマをみて、どこかで似たものを見た記憶はないだろうか。夏に風味を添えるミョウガ(茗荷)である。ミョウガもクルクマ同様にその食べる部分を花と呼んでいる。

 

ところで花は、手品のようにどこからでも現われ開花してしまうようなことはできない。原則があり、花となる芽は、苞と苞が着く枝がつくる空間である腋にしかできない。クルクマもミョウガも花と呼ばれているものは、その苞がたくさん集まってできた構造物で、植物学ではこれを花序という。なので植物学的には花材は「クルクマの花序」というのが正しい。

ミョウガが夏の朝、苞の腋から繊細な可愛らしい本当の花が姿を現す。それと同じようにクルクマにも花を開くが、観賞上の魅力に欠ける。

 

ミョウガもクルクマもショウガ科に分類される植物である。ショウガ科は独特の花をもつ。多くの植物のように花は萼片と花弁があるが、もっとも目立つ花びら様の部分は、花弁ではなく実は雄しべが化けてできたものである。

夏の黄色の食べ物といえば、カレーが思い浮ぶ。カレーを黄色にしているのは、花材のクルクマという植物の地下茎からつくられるのが鬱金(ウコン)である。ウコンはカレーに欠かせない香料でもあり高い芳香を有するが、染料ともされる。鬱金染めがそれで媒染材なしに黄色や橙色などに染まるため、古くから利用されていた。ウコンは古来高貴な色だった。健康にもよいウコンにはまた防虫の効果もあった。今でも高級な和服地などはウコンで染めた黄色の布で包装する。東南アジアでは仏教徒といえば多くはウコンで染めた黄色の僧衣を身にまとっている。日本で人気の沢あんを染めるのもウコンである。香料(スパイス)や染料としてのウコンは、英語ではターメリック(turmeric)で、スパイスに詳しい人にはよく知られた名称だが、これがウコンと同じであることは存外知られていない。

 

クルクマという奇妙な名は、学名Curcumaによっているが、この語はサンスクリット語のkunkumaから来ている。クルクマはもと、クロッカスやサフランをいう言葉だった。サフランは今でも黄色に染める染料として利用されるが、これは雌しべを用いるので、産出量は限られ高価だった。一方ウコンの方は地下茎から大量に取れるのでの安価であり、サフランの代用品として利用された。アラビア語では今も両者を同じ語で呼ぶらしい。ターメリックの語はフランスでの中世ラテン語、terra merita、すなわち価値ある大地から来ている。高価なサフランが生える大地の意味であり、この語ももとはといえばサフランを指していた。

 

クルクマの仲間の植物はおよそ50種あり、熱帯アジアに分布している。キョウオウCurcuma aromatica、ガジュツCurcuma zedoariaなどがある。

 

記/大場秀章(植物学者)

 


制作協力/大田花き花の生活研究所