Flower Display 〜フラワーデザインの挑戦〜 Vol.6



Cube Flower Display ~フラワーデザインの挑戦・幅・高さ・奥行900mmの空間~

Vol.6 ディスプレイ + フラワーデザイン
秋の夜長の知的空間 ~本と落ち葉とポエム~

Vol.6 ディスプレイ+フラワーデザイン 秋の夜長の知的空間 ~本と落ち葉とポエム~

なぜフラワーディスプレイ?

――フラワーデザインがわき役だからこそ美しく見える空間。
フラワーデザインの主役は、もちろん「花」。
でも、その花を何かを引き立てる“わき役”として考えてみたら……
あえて視点をそらすことで、フラワーデザインの新たな可能性を模索する。
それがフラワーディスプレイの挑戦です。

 

フラワーデザインが主役である作品ではなく、装飾品でもなく、インテリアとしてでもない。フラワーデザインだからこそできるアイテムの引き立て方を通して、フラワーデザイン界の外に目を向けてみたい。そんな気持ちを胸に、ディスプレイデザインの領域に、花のみを使って挑戦する企画です。プロのディスプレイデザイナーとして活躍中の山田祐照氏(ノムラデュオ取締役)をアドバイザーに迎え、ディスプレイのプロの視点をプラスして毎回お届けしていきます。

 

Challenge!! Display

1 テーマ -まずは、テーマとなるアイテムを決定
1冊の本を引き立てるフラワーデザイン

日本植物史 フローラ・ヤポニカ

主役となるアイテムは、1冊の本。秋の夜長に彩(いろどり)を添えてくれる本は、この季節の必須アイテムではないでしょうか。書店も“読書の秋”としてさまざまな売り方を考えていることでしょう。そんな書店の本を並べるだけの陳列にアクセントをつける意味で、Book+Flowerのディスプレイを提案します。今回ディスプレイする本は、花好きならどなたでも知っている『日本植物史 フローラ・ヤポニカ』です。

フラワーデザイン関連の書籍であれば、NFDライブラリーに2,000冊もあることをご存知でしょうか。その蔵書の中から、美しい挿絵で魅せる『日本植物史 フローラ・ヤポニカ』を対象として、幅・高さ・奥行900mmの空間という縛りの中で、フラワーディスプレイに挑戦してもらいました。


2 ディスプレイアイテムの特徴を捉える

ディスプレイアイテムの特徴を捉える

フラワーデザインするとき、花の特徴や特性をとらえることが不可欠であるように、ディスプレイするにためには対象物をまず理解することが大切。今回の主役である『日本植物史 フローラ・ヤポニカ』は、シーボルト(Siebold, Philipp Franz Balthazar von, 1799-1866)が中心となって編纂した植物図鑑です。シーボルトが見た、江戸時代後期の日本の植物を美しい彩色画によって、初めてヨーロッパに紹介。精密に描かれた彩色図譜はその美しさにおいて、古今東西のボタニカルアート(植物画)の中でも最高傑作と謳われるほど。この美しき植物図鑑をフラワーデザイナーはどう演出するのでしょう……。


3 テーマvsフラワーデザイナー

今回、稀代の名著『日本植物史 フローラ・ヤポニカ』をディスプレイするフラワーデザイナーは、長谷川典子NFD本部講師。

 

当時のヨーロッパの人々を魅了した、美しい彩色画が一番の特徴である『日本植物史 フローラ・ヤポニカ』。それが今回のディスプレイの対象物と聞いて、NFDライブラリーに実際の本を見に行きました。本の特徴を捉えるために、何度もページを捲り、何時間も悩みながら、ディスプレイする時に最適なページを探します。実際のデザインを想像しながら、季節感を大切に、最終的に私が選んだページは、「ヒノキ」と「カエデ」でした。

長谷川典子

デザイナー・プロフィール

長谷川典子 Fumiko HASEGAWA

 

本部講師 城西支部

花ファッションデザインチーム

4 ディスプレイデザイナーとのコラボ

フラワーデザイナーが考えたデザイン案をプロのディスプレイデザイナーと融合させる。花の視点とアイテムの視点が限られた空間の中で開花します。

 

数日後、長谷川先生からデザイン画が届きました。
それは、「ヒノキ」のページを使うデザインでした。

 

長谷川さんデザイン画

 

 

ここでプロのディスプレイデザイナーのアドバイスをプラス。

 

山田さんデザイン画

 

山田さんデザイン画

(クリックで拡大)

5 制作上のポイント

撮影当日、花材の仕入れの関係から、ヒノキではなく、カエデで挑戦することになりました。
ただの箱が段階を踏んでディスプレイされていく。

STEP1

幅・高さ・奥行900mmの空間。平面と立体を意識して、あえて背景を写真にすることで、より平面の静けさを強調させました。


STEP2

そこにディスプレイの土台となる切り株を。


STEP3

ディスプレイの基本の三角構成を意識して、本、落ち葉と切り株、モミジの枝の3点の構成に。両サイドにはミラーを置くことでディスプレイに広がりをつけました。


 

 

 

 

6 デザインメッセージ

デザインメッセージ

大変美しいシーボルトの『日本植物図譜(フローラ・ヤポニカ)』を見て、日本の美しい植物や四季をシーボルトがどんな気持ちで眺めたのか……ということを考えました。秋のモミジの紅葉をきっと澄んだ空気を吸いながら、静かな気持ちでいつまでも佇んでいたことでしょう。そんなイメージを元に、秋のモミジを使って『日本植物図譜(フローラ・ヤポニカ)』をディスプレイしてみました。

 

デザインメッセージ


7 ディスプレイデザイナーの視点

監修いただいたディスプレイデザイナーの山田祐照氏のコメントを掲載。

『日本植物図譜』を主役にして秋色の空間を演出する。ディスプレイはその背景となる情景を創り出し、想像力を増幅する役目があります。今回、長谷川さんのプランは本を開いた時に、秋の情景が飛び出してくる、飛び出す絵本のアイデアでした。平面から立体へと変容する空間は、写真と実際の植物をコントラストにして図譜の魅力を引き立てています。主役の図譜も、それを引き立てるためのフラワーデザインも生かされ情景が伝わる良い空間となっています。

山田祐照 Hiroaki YAMADA

デザイナー・プロフィール

山田祐照 Hiroaki YAMADA

 

ディスプレイデザイナー。1956年生まれ。東北工業大学工学部工業意匠学科卒業。日本空間デザイン協会理事。日本ビジュアルマーチャンダイジング協会理事。(株)ノムラデュオ取締役。ディスプレイデザイン・空間デザイン・プロダクトデザインと、幅広くデザインとディレクションを手がける。銀座和光・京橋ブリヂストンのショーウインドウでディスプレイデザイン最優秀賞受賞。現在は、百貨店のVMDや国内外のモーターショー、光による環境演出のデザインワーク(イルミネーション)を中心に活動している。人々の笑顔のために、ディスプレイという空間増幅装置を駆使し、あらゆる空間や環境に揚力を送り続けている。