夏の暑さに弱い草花は、暑さをタネの姿でしのぐために、夜の長さをはかることによって、暑さの訪れを予知し、春に花を咲かせることを、春(5月)に紹介しました。

アサガオやキク、コスモスなどの冬の寒さに弱い草花が、夏から秋に花を咲かせるのは、冬の寒さをタネの姿でしのぐためです。そのためには、やはり、夜の長さの変化が利用されています。

夜の長さは、6月下旬の夏至の日を過ぎて、だんだんと長くなります。夜の長さが最も長くなるのは、12月下旬の冬至の日です。それに対し、冬の寒さが最も厳しいのは、2月ごろです。ですから、夜が長くなるのをはかれば、冬の寒さの訪れを前もって知ることができるのです。
しかし、「夜が長くなるのをはかって、花を咲かせる」 といっても、一日は24時間と決まっています。ですから、「夜が長くなれば、昼が短くなるのだから、昼と夜のどちらの長さの変化がツボミをつくるのに大切なのかはわからないのではないか」との疑問が浮かびます。その疑問を解消するための実験を紹介します。

発芽したアサガオのふた葉の芽生えを、16時間の昼と8時間の夜の条件で育てると、ツボミはできません。ところが、8時間の昼と16時間の夜という条件で育てると、ツボミができます。
そこで、一日24時間という枠を外して実験をしてみます。16時間の昼と8時間の夜という一日の夜を8時間のままにして、昼の長さを8時間と短くして育てても、ツボミはできません。一方、昼を16時間のままにして、夜を16時間と長くして育てると、ツボミはつくられます。
昼は短くなってもツボミはできませんが、長い夜が与えられると、ツボミができるのです。長い夜が大切なことは、次のようにして、もっとはっきりと確かめることができます。

アサガオは、一日中、電灯をつけた照明下で育てられると、いつまでも、ツボミをつくりません。そこで、その照明下でいろいろな長さの夜(暗闇)を1回だけ与えます。たとえば、7時間や8時間、9時間の暗闇を与えた場合、ツボミはできませんが、9時間30分以上の長さの暗闇を与えると、ツボミができ、やがて花が咲きます(図参照)。

ツボミができるかできないかの境目の夜の長さは、限界暗期と呼ばれます。限界暗期以上の暗闇を感じるとツボミをつくるのは、夏から秋に花を咲かせる「短日植物」、限界暗期以下の暗闇を感じるとツボミをつくるのは、春に花を咲かせる植物で、「長日植物」とよばれます。


図:田中修著「植物の生きる『しくみ』にまつわる66題」より
(サイエンス・アイ新書 SBクリエイティブ株式会社)

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