花壇や植木鉢に栽培されているチューリップの花は、初めて開いた日より、10日もすると、約2倍の大きさになることもあります。開花後、日が経てば、花が成長して大きくなるのは当然のようですが、チューリップの花ほど大きくなるのはめずらしいのです。この花が大きくなるのには、そのための“しくみ”があります。
この花は、朝に気温が高くなると開き、夕方に気温が低くなると閉じます。植物は、「刺激に対して反応しない」と思われがちです。でも、チューリップの花は、朝に上昇し夕方に低下するという、1日の気温の変化を刺激として感じ、それに反応するのです。この花の運動は、気温の変化という温度が刺激となっているため、「温度傾性」、あるいは、「熱傾性」とよばれます。「傾性」というのは、刺激に対し、植物が反応する方向が決まっている運動に用いられます。
それに対し、与えられる刺激に対して、植物が反応をする運動の方向が支配される場合には、「屈性」という語が使われます。たとえば、光がある方向から与えられると、植物の茎はその方向に向かって伸びます。これは、光という刺激が与えられた方向へ、茎が伸びるように支配されているので、「光屈性」といわれます。
以前は、刺激の種類を「屈性」の間に挟むことになっていたので、この運動は「屈光性」とよばれていました。近年は、刺激を先に出すことに決められているので、「光屈性」といわれます。
チューリップの花が日の経過とともに大きくなるのは、規則正しく、朝に開き夕方に閉じる開閉運動をするのが原因です。花びらには、メシベの方を向いている内側の面と、花が閉じたときに花を包み込むように見える外側の面があります。
朝に気温が高くなると、花びらの内側の面が外側の面よりよく伸びます。その結果、花びらは外側へ反り返ります。これが、「開花」という現象です。夕方に気温が下がると、気温が上がったときとは逆に、花びらの外側の面が内側の面よりよく伸びます。すると、反り返っていた花びらの反りがなくなります。その結果、花は閉じます。これが、「閉花」という現象です。
朝に、花びらの内側がよく伸びて、外に反り返り、夕方に、花びらの外側がよく伸びて、花が閉じるのですから、毎日、花は少しずつ大きくなります。チューリップの花は、約10日間、開閉運動を繰り返したあとに萎れますから、初めて開いた日の花より、約2倍の大きさになることもあるのです。

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